
はじめに
「日本語教師に興味はあるけど、給料がどれくらいもらえるのかわからない…」
「新卒で日本語教師になりたいけど、勤続年数によって給料がどれくらい変わるのかな?」など、給料について気になる方は多いのではないでしょうか?
そこで今回の記事では、私たち日本語教師キャリアが日本語教師としての勤務経験がある/勤務中である方689名に調査したアンケートをもとに、日本語教師の給料を雇用形態や勤続年数などに分けて詳しく解説します!
アンケート調査の概要
調査主体:日本語教師キャリア
調査方法:Reboot Japan株式会社が運営する「日本語教師キャリア」に登録している調査対象者にインターネット調査
調査対象:2024年4月〜2025年3月までの間に有給で(ボランティアは含めない)、学校などの団体(日本語学校、専門学校、大学の留学生別科、日本語教師に研修を行う職場など)に所属して日本語教師としての勤務経験がある/勤務中である方689名
調査期間:2025年3月15日〜4月15日
調査地域:日本国内・国外
前回の調査結果については、下記ページよりご確認いただけますので、こちらも合わせてご一読ください。

日本語教師の仕事内容
日本語教師の主要な業務は、日本語を学ぶ必要のある外国人や日本国籍の方々に対して、適切な学習指導とサポートを提供することです。具体的には、授業での文法や発音の指導はもちろん、授業前の教案作成や授業後のテスト評価など、教室内外での準備作業も含まれます。また、学習者が日本での生活をスムーズに送れるよう、日本の文化的背景や社会習慣、歴史についての理解を深める学習機会を提供することも、日本語教師の重要な役割です。
日本語教師の活躍の場は非常に幅広く、国内であれば日本語学校、専門学校、大学、国際学校などの教育機関があります。また、海外の日本語教育施設や日本語プログラムを持つ学校での勤務、個人で教室を開く働き方や、オンライン授業など、多様な就業形態があります。
さらに、日本語教員の国家資格化制度に伴い、日本語教育の質の向上、教師の専門性保障、待遇改善、キャリアパスの明確化、国際的な信頼性向上が見込まれます。
日本語教師になるためには…?
一般的に日本語教師になるためには、現時点では以下の4つのルートがあります。
(1)四大卒以上、且つ日本語教師養成講座420時間修了
(2)令和5年度まで実施の日本語教育能力検定試験合格
(3)大学または大学院において日本語教育を主専攻または副専攻で修了
(4)登録日本語教員の資格保持者
日本語教育機関認定法における新たな国家資格、「登録日本語教員」制度が昨年度からスタートとなり、日本語教師になるためのルートが新しくなりました。
上記(1)〜(3)の資格のみの保持者も、近いうちに(4)登録日本語教員の資格が必須となるため、登録日本語教員の資格取得を補助する学校も、徐々に増えています。
日本語教師の将来性 -国家資格化による影響
現在、世界で日本語を学ぶ学習者数は増加傾向にあります。
国内においても、法務省の統計によると、2024年6月末時点では358.9万人に達し、増加傾向が続いています。
文部科学省「令和5年度日本語教育実態調査」によると、令和5年度には国内の日本語教育実施機関・施設数は2,727、日本語教師等の数は46,257人、日本語学習者数は263,170人となっており、平成2年度と比較するとそれぞれ約3.3倍、約5.6倍、約4.3倍に増加しています。
また、令和6年4月からは日本語教師の国家資格化が進み、「登録日本語教員」の制度開始に伴い、「日本語教育機関の認定制度」や資格制度が創設され、日本語教育を取り巻く状況は大きく変化しています。さらに、技能実習制度が2024年から「育成就労制度」へと移行することで、より多くの外国人材が日本で学びながら働く機会を得ることになり、日本語教育の需要がさらに高まると予想されています。
今後も、日本語教師のニーズはますます高まっていく中で、教育現場だけでなく、オンライン教育や企業内研修、地域の日本語支援など、活躍の場の多様化も進んでいます。国家資格制度の整備と相まって、日本語教師の就労面・待遇面の改善が進むことが期待されます。また、多くの日本語教育機関では、教員の国家資格取得を支援するため、資格試験の受験料や研修費用の補助を行うようになってきています。これにより、より質の高い日本語教育の提供と、教師のキャリアパスの明確化が進むことが見込まれます。
アンケート回答者について

今回のアンケートに回答いただいた689名の構成を確認していきます。
まずは、回答者の性別比率、年代比率、職場種類、勤務地比率の内訳を紹介します。
性別比率

回答者の性別比は、昨年のアンケート時と同様の比率となりました。約70%が女性教師であり、男性教師は約30%程度です。日本語教師は女性が多数を占める職業であることが改めて明らかになりました。
年代比率
下記は、年代別の割合をグラフ化したものです。

年齢層の分布も昨年のアンケート時と同様の比率となりました。50代・60代の中高年層が最も多く、次いで40代が続きます。50代と60代を合わせると全体の約60%を占めており、日本語教師の年齢層が比較的高いことがわかります。20代・30代はあわせて約16%と、若手層は少数派です。
職場種類
下記は、職場の割合をグラフ化したものです。

回答者の約70%が法務省告示校に勤務しており、他の職場(公立学校、民間企業など)と比べて圧倒的に多い結果となりました。すべての法務省告示校は、原則として2028年度末までに「認定日本語教育機関」へ移行する必要があり、移行しない場合は留学生の受け入れが認められなくなります。この制度変更により、今後「認定日本語教育機関」での勤務を希望・検討する教師が一定数増えていくと考えられますが、一方で、オンライン指導や企業内研修など、教育現場の多様化も進んでおり、勤務先の選択肢は今後も広がっていくと見られます。
その他の職場としては、公立学校や民間企業などが挙げられていました。
勤務地別分布
以下は、日本全国での勤務地別割合をグラフ化したものです。

回答者の勤務地は、関東地方が圧倒的に多く、次いで関西・中部・九州と続いています。
次に、以下は関東圏内で勤務している回答者の内訳をグラフ化したものです。

関東圏内では、東京都が70.6%と圧倒的多数を占めています。次いで神奈川県が10%、埼玉県が8.2%、千葉県が7.6%と続き、茨城県、群馬県、栃木県は少数でした。この結果から、東京都に日本語学校や留学生が集中している状況がうかがえます。
日本語教師の給料・年収の違いは?
日本語教師として働く場合、雇用形態は大きく分けて以下の2つに分類されます。
・常勤講師・専任講師(以下、常勤講師): 正社員としてフルタイム勤務する教員
・非常勤講師: パート・アルバイト・業務委託など、時間単位・コマ単位での勤務
雇用形態によって、給料や給与体系が異なるため、本記事では各雇用形態や役職別に紹介していきます。
常勤(専任)講師
常勤講師の平均年収は、以下の通りです。
平均年収:314万円
※ 海外・オンラインで働く日本語教師を除く
続いて、年収帯ごとの集計結果をご紹介します!以下の円グラフをご覧ください。

※ 海外・オンラインで働く日本語教師を除く
グラフを見ると、常勤講師の年収は「200万円〜400万円台」に集中していることが明らかになりました。特に「301万円〜400万円」が最も多く、次いで「201万円〜300万円」が続いています。
この2つの層だけで全体の約8割を占めており、常勤講師の年収レンジとしてはこのゾーンがボリューム層であることがうかがえます。一方で、「200万円以下」や「401万円以上」に該当する層は相対的に少なく、特に「501万円以上」はごくわずかでした。
非常勤講師
続いて、非常勤講師の給与についてご紹介します。
非常勤講師として働く場合は、コマ給か時給で給料が発生する場合が多いです。
本記事では、1コマ45分で換算し、平均コマ給を出しました。
平均コマ給:2,043円/コマ(45分)
※ 海外で働く日本語教師、オンラインで働く日本語教師を除く
昨年のアンケート実施時と比較し、今回の調査では平均コマ給が2,000円を上回る結果となりました!
ご回答いただいた方の多くが都市圏在住だったため、地域によってコマ給に差があると考えられますが、給料が少しずつ増加傾向にあるようです。
続いて、コマ給分布について分析した結果が以下の円グラフです。

<内訳>
・〜1,000円:0.5%
・1,001円〜1,500円:9.9%
・1,501円〜2,000円:49.5%
・2,001円〜2,500円:33.0%
・2,501円〜3,000円:5.3%
・3,001円〜3,500円:0.5%
・3,501円〜4,000円:0.5%
・4,001円〜:1.0%
非常勤講師のコマ給では、前回のアンケート集計時と同様「1,501円〜2,000円」が最も多く49.5%を占めており、「2,001円〜2,500円」が33.0%であり、「1,501円〜2,500円」層の方が全体の80%ほどを占めていることがわかります。また、昨年のアンケート結果では、上記2区分の差は約30%ありましたが、今年は15%差まで縮まり、コマ給の額も改善されてきていると言えそうです!
以下では、コマ給の80%ほどを占めていた「1,501円〜2,500円」層に絞って、より詳細なコマ給分布について分析した結果が以下のグラフです。

この範囲内では、「1,901円〜2,000円」が最も多く、次いで「2,001円〜2,100円」、「1,701円〜1,800円」、「1,801円〜1,900円」という順になっています。特に「1,901円〜2,000円」の割合が最も高く、1,501円〜2,500円の中でも比較的高単価の層に多く分布していることがわかります。これらより、非常勤講師のコマ給として、80%を占めていた「1,501円〜2,500円」層のうち、約70%ほどが最低でも1,901円以上のコマ給であることが分かります。
非常勤講師は、時間や場所に制約が少ない働き方である一方、安定した収入を得るためには、複数の機関で教えたり、他の仕事と組み合わせたりする工夫が必要となる場合もあります。しかし、自身のライフスタイルに合わせて柔軟に働き方を選択できる点は、非常勤講師の大きな魅力です!
近年、グローバル化の進展や日本への留学・就労希望者の増加に伴い、日本語教育のニーズは高まっており、それに伴い非常勤講師の需要も増加傾向にあると考えられます。アンケート結果からは、非常勤講師の給与水準にも日本語教育需要の高まりが少しずつ反映され始めている様子がうかがえます。
【ポジション別】日本語教師の給料・年収
まず、日本語教師の雇用形態(正社員・契約社員・業務委託・パート・アルバイト)と、ポジション(常勤・非常勤など)の関係性について、以下のグラフをご覧ください。

※ 海外・オンライン・役職者の日本語教師を除く
グラフからは、常勤(専任)講師の多くが正社員として雇用されており、一部に契約社員も見られることがわかります。
一方、非常勤講師では「パート・アルバイト」形態が最多で、続いて業務委託、契約社員の順となっています。
準常勤講師については全体の回答者数は少ないものの、その多くは契約社員として勤務しているようです。
続いて、各ポジション別の給与について紹介します。
正社員 | 1コマ45分の平均コマ給:2,150円(該当者:2名) 平均年収:338.6万円 |
契約社員 | 1コマ45分の平均コマ給:1,974円 平均年収:267.5万円 |
業務委託 | 1コマ45分の平均コマ給:2,156円 平均年収:135.2万円(該当者:4名) |
パート・アルバイト | 1コマ45分の平均コマ給:1,993円 平均年収:123.5万円(該当者:4名) |
※ 海外・オンライン・役職者の日本語教師を除く
雇用形態によって、日本語教師の年収には大きな差があることがわかりました。
特に「正社員」と「業務委託・パート・アルバイト」などの非正規雇用の間では、年収に2倍以上の開きが見られました。
一方で、コマ給(1コマ45分あたりの単価)は、雇用形態間で大きな差はないものの、年間のコマ数や安定した担当数の確保が収入に大きく影響すると考えられます。
【役職別】日本語教師の給料・年収
次に、校長・教務主任・教務副主任など、役職に就いている日本語教師の年収について紹介します。
経営者:平均384万円(該当者:3名)
校長:平均524万円
教務主任:平均417万円
教務副主任:平均389万円
教務主任と常勤講師では、平均年収に約80万円の差があることが分かりました。また、経営者の年収(384万円)が校長より低い点は興味深く、小規模校での経営者の兼任状況などが影響している可能性があると考えられます。
日本語教育機関では、常勤教員からマネジメント層(校長や教務主任・副主任)へとステップアップすることで、収入面での向上を実現できます。こうしたキャリア発展には、実務者としての一定の実績期間が必須条件となります。
◆校長
・日本語学校教育機関の運営に必要な識見を有し、 かつ、教育に関する業務に5年以上従事した経験のある方
◆教務主任
・法務省認定の日本語教育機関において3年以上の常勤講師の経験がある方
このように、日本語教育の現場では経験を積み重ねることで、責任ある地位と収入アップの可能性が開けるキャリアパスが存在しています。
日本語教師の福利厚生 賞与や手当は?

続いて、日本語教師の福利厚生についてお話しします!
今回のアンケートでは、回答者の約70%が「その他手当(福利厚生)」について回答してくださいました。
回答者の詳細な内訳は以下の通りです。

<内訳>
・交通手当:65.9%
・時間外業務の手当(残業、授業準備、会議参加、行事参加など):14.9%
・役職手当(主任手当、担任手当など):8.6%
・住宅手当(社員寮、家賃補助など):4.9%
・賞与手当:3.8%
・資格手当(資格、日本語登録教員資格の手当):1.2%
・上記以外の福利厚生の例:オンライン手当、家族手当 など
日本語教育機関における福利厚生の調査結果からは、最も普及している福利厚生は交通手当で、全体の65.9%を占めています。これは業界標準として広く定着しており、教師の基本的な通勤コスト支援として機能していることがわかります。
一方、教育の質に直結する時間外業務手当(残業、授業準備、会議や行事参加など)は14.9%にとどまり、多くの教育機関では授業外の業務に対する適切な報酬体系が未整備である実態が浮かび上がります。さらに、役職手当(主任手当、担任手当など)は8.6%と低く、追加的な責任を負う教師への金銭的評価が十分でないことを示しています。
こうした手当の内訳をもとに、生活支援に直結する項目についても確認していきましょう。
生活基盤を支える福利厚生に関する項目としては、住宅手当や家賃補助は4.9%、賞与手当は3.8%と非常に限定的です。これは、日本語教師の長期的な生活安定や定着を支援する制度が十分に整っていないとも読み取れます。資格関連手当(1.2%)は現状では普及率が低いものの、日本語教育の国家資格制度導入に伴い、教員の資格取得を経済的に支援する教育機関が増加傾向にあります。
全体として、日本語教育機関の主な福利厚生は最低限の通勤費支援にとどまっており、教育の質の向上や教師のキャリア発展、生活基盤の安定に資する手当は、依然として不足している状況です。日本語教師の国家資格化が進む中で、福利厚生の整備も早急に進められることが期待されます。
海外やオンラインの年収・コマ給の実例
今回のアンケート回答者のうち、約10%の方がオンラインまたは海外で日本語教師として活躍していたため、その実例もいくつか紹介したいと思います。
以下は、海外・オンラインで活躍されている日本語教師の方の勤務地別分布のグラフです。

※海外・オンライン日本語教師(61名)
東南アジアが34.4%と最も多く、次いでオンライン32.8%、東アジア19.7%、北米9.8%の順になっています。南アジアやアフリカは比較的少数にとどまっています。海外勤務の中では、特に東南アジアが最も人気の地域であることがわかります。
○ オンライン
Aさん (認定日本語教育機関/業務委託契約):コマ給2,000円
Bさん (個人事業主/常勤講師):年収250万円
○ ベトナム(東南アジア)
Aさん (技能実習生送り出し機関/正社員/常勤講師):年収220万円
Bさん (大学・大学院/契約社員/常勤講師):年収300万円
Cさん (日本語センター/正社員/副主任):年収550万円
◯ フィリピン(東南アジア)
Aさん (企業/契約社員/常勤講師):年収440万円
Bさん (企業/業務委託/常勤講師):年収270万円
○ 韓国(東アジア)
Aさん (大学・大学院/契約社員/常勤講師):年収300万円
Bさん (進学塾/契約社員/常勤講師):年収270万円
○ アメリカ(北米)
Aさん (中学校・高校・大学/正社員/非常勤講師):年収1500万円
Bさん (日本語学校/パート・アルバイト/教務主任):コマ給1,800円
東南アジア諸国では日系企業の進出や日本への留学・就職希望者が多く、日本語学習需要が高いことが背景にあると考えられます。次いで多いオンライン勤務については、コロナ禍を経て急速に普及した教育形態の影響で定着しており、オンライン指導は世界中の学習者にアクセスできる柔軟な働き方として今後も増加されると予想されます。
勤務地や雇用形態によって給与水準にはばらつきがありますが、海外やオンラインでの勤務では、日本国内より高収入となる可能性があることが読み取れます!
おわりに
以上、日本語教師の給与・年収に関する詳細な調査結果でした。これらの情報が、これから日本語教師を志望される方々や、他業種から日本語教育への転身を検討されている皆様の進路決定に役立つことを願っております。
最後に、これまで多くの教育者の方々と関わってきた、私たち”日本語教師キャリア”より、本記事をお読み下さった皆様へのメッセージがあります!

【日本語教師キャリアからのメッセージ】
2024年4月から「登録日本語教員」の制度が始まり、日本語教育業界は大きな変化の時期を迎えています。この制度により、日本語教師の専門性がより明確になり、働き方や待遇面での改善が期待されています。
実際、待遇や福利厚生の面で少しずつ前向きな動きが見られるようになってきましたが、日々現場や求職者様からのお話を聞いている中で、「まだまだこれから」という意見も多くあります。特に、若手の方々からは、安定した収入やキャリアパスの明確化を望む声が寄せられています。
私たち日本語教師キャリアでは、日々多くの学校や教師の方々と接する中で、「どのようなスキルや姿勢が現場で評価されているのか」「日本語教師としてどのような働き方があるのか」といった知見も蓄積しています。
日本語教師としてのキャリアを考えている方、またはキャリアチェンジを検討されている方がいらっしゃれば、まずは日本語教師キャリアの求人サイトから気になる学校に応募してみてくださいね。日本語教師キャリアのキャリアアドバイザーが、ご希望やお悩みをヒアリングし、選考のサポートをいたします。
まとめ
- 常勤講師の平均年収は314万円
- 非常勤講師の平均コマ給は2,043円 (1コマ45分)
- 関東・東京での勤務者が多い
- 教務主任等、役職を持つことで年収が大きく上がる
- 日本語教師を取り巻く福利厚生には改善の余地あり
- 東南アジアやオンラインでの活躍可能性もあり